軽視される社会科
1947年に誕生し姿を変えてきた「社会科」だが、1974年に1つの変換点を迎えている。
1974年に高校への進学率が90%を越え、生徒間での格差が徐々に露わになってきた。
その結果として「落ちこぼれ」という新しい教育概念が登場し、また非行や学校嫌いなどの増加も深刻な問題となり、教育の質の改善が求められる時代へと突入した。
このような時代背景のもとで教育指導要領が中学では1977年、高校では1981年に改定され、その主眼は人間性の充実をはかった「ゆとりの時間」の導入であった。
この煽りを受け、中学の社会科の授業時間が年間50時間程度削減となり、社会科に当てられる時間が大幅に減る結果となった。
この後も社会科に充当される時間は減少を続け、1996年の要領改定によっても数十時間減少し、それに合わせ学習内容も削減されることとなった。
ゆとりから学力への回帰
さらに2008年になるとPISA調査(OECDによる学習到達度調査)により、
日本生徒の学力低下が問題となり、これまでのゆとり教育に対する非難が強まった。
結果として、中学では学習時間がそれまでより50時間強増加され、1970年の水準には行かないまでも揺り戻しが起こっている。
またPISA調査はこれからの社会科に要請する、育成すべき項目に影響を及ぼしている。
これまでの社会科が育成する能力や目標は「地理的な見方や時考え方」「歴史の学び方」などといった、社会認識形成に対する生徒自身の能力を高めることに焦点を当てるものであった。
しかしPISAにより明らかな読解力不足や知識活用能力の不足が明らかになり、
社会科にも社会科を越えた新しい学力「キーコンピテンシー」の育成が求められることとなった。
つまり、ゆとり教育の反省により、教育の量としては過去基準への回帰を行い、また質に関しては、ゆとり教育によって育むべき項目の微修正により、知識だけでなくその知識を活用する能力を育むよう求めている。
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