高等学校の学習指導要領では、社会科目の目標として
「平和で民主的な国家・社会の形成者として必要な公民としての資質を養う」と定められている。
それは一体どのようなものなのか。またどのようにして獲得するべきか考えてみたい。
公民としての資質とは
そもそも「公民」を辞書で引くと
「国政や地方公共団体の公務に参加する権利と義務を持つ者。市民」の意と出てくる。
国、地方、地域に所属する者として、そのコミュニティを維持・発展させていく市民と言い換えられそうだ。
その一方で、現在自分たちは国民としてだけではなく国際的な問題に対してもどう関わっていくか求められているようだ。
顕著なのは政治問題や環境問題など一国だけでは解決できない問題であり、どう協調していくのかその姿勢や行動が求められるのが現代であると言える。
Think globally, Act locally
このような現代において、「地球市民」や見出しの「Think globally, Act locally」
と言った言葉を見たり聞いたりするようになった。
これは今や自国のことのみならず、国際的な視点で考えられる人であるべきだといったことを象徴する言葉のように思える。
しかし、「国際的に」というとなんだか難しく、また、自分には難しいと思えてしまう。
しかし「Think globally, Act locally」は、「国際的な目線で考え」ながら「地域で行動」すれば良い、という普遍的なあり方・方法論を示唆してくれている。
公民的資質に必要な能力
それでは一体、公民的資質もつために育むべき能力はなんなのだろうか。
問題解決ために必要なキーワードをあげてみると以下3つに分けられると思う。
- 問題の認識
- 行動の決定
- 行動への責任
第一に、問題が問題であることを認識し、どう行動するのか必要に応じて協議しながら決定し行動をとる、またその成果に対する責任をとる。これがコミュニティに所属するものがある問題に対して取る行為であり、能力が必要となる。
問題が問題として認識されるには、その背景に知識が必要となる。あるべき社会はどういう姿なのか、従来の社会と比較してどこが間違っているのか?そのモデルを把握しておく必要があり、その知識教育を担うのが第一の公民科目の目標となるべきである。
また2つ目に、問題を認識した上でどのように行動するべきか知る必要がある。これについては、従来の系統学習では教えきれないところであり、どちらかというと以前の問題解決型のテキスト・授業展開が望ましい。もしくは社会科目以外のところでの生活指導、校内の組織活動や地域連動型の教育活動の中で育まれるべき項目となる。
最後に、行動への責任であるが、責任を伴わない行動に説得力はないし信頼性も生まれない。これについても社会科で教え切れるところではなく、授業以外での活動・教育の中で育まれるべき項目となるはずだ。
まとめると、社会科単独では公民的資質を持った人材を教育することはできない。知識を与えることはできるが、それをどう現実社会の中で活用するかについては、学校内・地域内での問題解決の実践が必要となるはずである。
ただし、社会科が当該目標を達成するために存在し続ける限り、その教科を超えた指導については社会科担当の教師が先導するべきであり、積極的に授業づくりしていくべきではないだろうか。